役立ちコラム

演奏会・発表会の撮影
カメラは何台必要?

1台・2台・3台以上の違いと選び方

カメラは多い方がいいのか、2台だと物足りないのか。台数だけを見ると分かりにくいですが、それぞれに何を撮らせるかを考えると、必要な構成も見えてきます。実際の画角を見ながら説明していきます。

執筆:斎藤 拓郎(Right And Left)

基本に考えているのは、正面引きと正面寄りの2台です

Right And Leftでは、舞台全体を撮る「正面引き」と、出演者に寄る「正面寄り」の2台を基本におすすめしています。基本的には、この2台があれば映像として成立します。そこから先は、ご予算や好みに応じて、どんな画角を足したいかを考えていけばよいと思います。

台数による、基本的な役割の違い

1台シンプルな全景記録
2台全景+寄りの基本構成
3台以上別角度を加えた表現

撮影プランを見ていると、カメラ2台、3台、5台と、いろいろな構成が出てきます。初めて頼む場合は、どれくらいあれば十分なのか分からないですよね。

私自身は、ピアノやダンスの発表会なら、2台で十分に見応えのある映像を作れることが多いと思っています。一方、吹奏楽やオーケストラでは、3台、4台、ときには5台以上を使うこともあります。

ただ、多ければその分よい映像になるかというと、そう単純でもありません。どこに置いて、何を撮るのか。その役割から考えた方が、台数を決めやすいと思います。

SECTION 01

1台でも撮れます。ただ、アップも撮るなら難しくなる

舞台全体が入る位置にカメラを固定して、最初から最後まで録る。こういう記録なら、1台でも対応できます。全体の様子さえ分かれば十分、という用途には合っています。

困るのは、その1台でアップも撮ろうとしたときです。右側の出演者から左側の人へ移るなら、その間もカメラは動いています。ズームやピントを直す途中で、画が少し乱れることもあります。

別のカメラがあれば、その部分だけ違う映像に切り替えられます。でも1台だけだと、切り替える先がありません。編集で何とかしようにも、ほかの映像がないわけです。

1台が向いているのは、全景を固定で残すような撮影です。
寄りと引きを組み合わせた映像にしたいなら、2台以上をおすすめします。
SECTION 02

2台あると、寄りのカメラを動かしやすくなります

正面引きと正面寄りがどう違うのか、まず写真で見ていただくと分かりやすいと思います。

正面引きの画角例。オーケストラと合唱団を含む舞台全体を正面から撮影した映像
CAM 01正面引き(全景)舞台全体や出演者全員、フォーメーションを記録する基礎となる画角。
正面寄りの画角例。ソリストと指揮者を中心にオーケストラを近くから撮影した映像
CAM 02正面寄り(アップ担当)演奏者の表情や手元、音楽の見せ場へ適宜寄って撮る画角。

正面引きは、基本的に固定して舞台全体を撮ります。このカメラには、全景を記録する以外にも大切な役割があります。寄りのカメラを動かしている間に、編集で使える映像を確保できるということです。

例えば、右側の奏者を撮ったあと、すぐに左側の奏者を狙う必要があるとします。このときカメラをかなり速く動かすこともありますが、その動きをそのまま完成映像に使うと、画面が大きく振られて、かなり落ち着かない映像になってしまいます。

なので、その間は全景を使うことを想定して、寄りのカメラでは次の構図とピントを整えます。2台あると、ただ画角が増えるだけでなく、こういう撮り方ができるわけです。

撮影しながら、編集で使う場面も考えています

私は曲を聴きながら、「ここは全体を見せたい」「次のフレーズではあの奏者に寄りたい」と考えています。ここは引きを使おうと思ったら、その間に寄りのカメラを準備する。

逆に、ここは絶対に寄りを使いたいと思う場面では、神経を集中させて、ブレやピントずれが起きないようにしっかり撮ります。

そうした判断の連続の中で、操作するカメラで今何をどう撮るかを考える必要があると思っています。

SECTION 03

3台目以降は、違う角度を足していくことが多いです

吹奏楽やオーケストラでは、3台目、4台目として斜めからの画を足すことが多いです。例えば、こんな構成です。

カメラ台数基本的な構成
2台正面引き + 正面寄り
3台正面2台 + 斜め引き1台
4台正面2台 + 上手・下手の斜め引き
5台4台の構成 + 指揮者などを狙うカメラ

斜めから見ると、正面では分かりにくい舞台の奥行きや、奏者同士の位置関係も見えてきます。

斜め画角1の撮影例。オーケストラを舞台に対して斜めから撮影し、奏者と指揮者を立体的に見せた映像
ANGLE 01斜めの画角・その1正面とは異なる角度から舞台全体や演奏者の配置を見せる。
斜め画角2の撮影例。合唱団も含むオーケストラの舞台を別方向から斜めに撮影した映像
ANGLE 02斜めの画角・その2別方向からのカットを用意し、編集で選べる構図を増やす。

もちろん、配置は会場や演目によって変わるので、ケースバイケースで検討します。ただ、撮影する側の気持ちとしては、なるべくいろいろな角度からの画を押さえておきたいのが本音です。

例えば、正面からは見えにくい手元や指揮者の表情が撮れると、編集で使えるカットが一気に増えます。長い演奏会でも曲の流れに合わせて画角を変えやすくなりますし、飽きずに見てもらえる映像にしやすいんですね。

ただ、機材が増えれば設営も編集も手間が増え、費用も上がります。そこはご予算との兼ね合いを見つつ、相談しながら決めていきます。

SECTION 04

ダンス発表会は、2台で十分なことも多いです

ダンスの場合、顔の表情だけでなく、身体全体の動きやフォーメーションをきちんと残してほしいというご要望が多いです。

撮影に慣れていないと、つい表情のアップを優先してしまうこともあると思います。でも、踊る本人たちは手足の先まで神経を使っていますし、フォーメーションの変化にも心血を注いで練習しているわけです。そこを映さずに顔ばかり撮ってしまうのは、やっぱりもったいないですよね。

なので、特に指定がない限り、寄りのカメラでも基本的には頭から足のつま先まで収まるように撮っています。大人数のフォーメーションは引きで、少人数のグループを見せたいときは寄りで撮る。この使い分けができれば、2台でも見応えのある映像になります。

ただ、小さなお子さんの発表会では、表情を優先してほしいというご希望も多いので、その場合はウエストアップやバストアップなど、表情にフォーカスした撮り方をします。

発表会だからこそ、なるべく公平に映したい

発表会の映像は、保護者の方がご自身のお子さんを見るわけです。誰かが全然映っていない、ということはできるだけ避けたいので、なるべく公平に残すことも念頭に置いています。

とはいえ、一人ひとり何秒映ったかまで数えているわけではありません。ソロの場面ではその出演者をしっかり押さえ、大人数なら左右にカメラを動かすなどして、できるだけ多くの出演者を映すようにしています。

芸術性を見せる作品やコンテストなら、また別の考え方もありますが、一般的な発表会では、こういう配慮はかなり大事だと思っています。

SECTION 05

吹奏楽・オーケストラでは、今どの楽器が主役なのかも大切です

吹奏楽やオーケストラでは、例えばヴァイオリンのソロが聞こえているのに、画面ではトランペットばかり映っていたら、ちょっとちぐはぐですよね。フルートやサックスが主旋律を吹いているなら、その奏者を見たくなるのが人の心というものです。

難しいのは、木琴や鉄琴のように、曲の一部分だけで演奏する楽器です。こういう楽器は舞台の端に配置されることが多いので、左から右へ順番にカメラを動かしているだけだと、その楽器にカメラを向けたときには演奏していない、ということがよくあります。

姿が映っているだけでなく、実際に弾いているところを残してあげたい。だから、出番の少ない楽器は特にタイミングを意識して撮っています。

私は長年ギターを弾いてきたので、演奏者の気持ちや曲の流れも考えながらカメラを動かしています。まずは音楽的な見せ場を優先し、そのうえでなるべく出演者に偏りが出ないようにする。編集でも自然につなげられるように撮る。

これを全部両立するのは、今でも難しいところです。公平に映すことばかり考えていると、ソロに気付くのが遅れることもありますし。もっとよい撮り方ができるはずだと今でも思います。精進あるのみですね。

SECTION 06

カメラが5台あっても、5人で撮っているとは限りません

台数を考えるときに、もう一つ考えるべきことはカメラマンの人数です。固定で事足りるのか、それとも人が操作する必要があるのかで考えていきます。

私の場合、操作するカメラが1台で、そのほかに固定カメラが4〜5台あっても、設置条件や準備時間に問題がなければ、1人で対応できると判断することがあります。こうしたセッティングには慣れているので、カメラの台数だけ人を呼ぶ必要はないんですね。

でも、同時に2台のカメラを操作したいとなったら、私1人ではできません。それぞれを操作するカメラマンが必要になります。

カメラの台数とカメラマンの人数は、必ずしも同じではありません。
何台のカメラを同時に人が操作する必要があるか、という点から考えています。
SECTION 07

指定席の公演では、カメラ位置に気を付けて

「この位置から撮りたいですね」となっても、そこがすでに販売済みの指定席だったら、後からカメラを置くのは難しくなります。

なので、できれば指定席を販売する前に、撮影業者とカメラ位置を相談しておいてください。台数だけ決めて、置き場所は当日考える、という順番には絶対にしない方がいいと思います。せっかくお金をかけるのだから、できるだけよいものを残しましょう。

プログラムやタイムテーブルに加えて、特別な演出や、立って演奏するソロなども事前に分かると助かります。どこで何が起きるか分かれば、それを考慮したうえで撮影できます。こういう小さな準備が、映像のクオリティを左右してくると思っています。

初めて撮影を依頼する方は、発表会・演奏会の撮影依頼ガイド(PDF)もご利用ください。

よくある質問

ピアノ発表会もカメラ2台必要ですか?

舞台全体の固定記録だけなら、1台でも対応できます。手元や表情など、違う画角を組み合わせて見たい場合は、2台以上が向いています。

カメラが多いほど映像はきれいになりますか?

台数が増えると、主に画角や編集の選択肢が増えます。画質そのものは、使う機材、撮影技術、色の調整などにもよるので、台数だけでは決まりません。

2台と3台で迷ったら、どちらを選べばいいですか?

まずは全景と寄りの2台で、残したいものが撮れるかを考えるのがおすすめです。そこに斜めの映像や違う表情を足したいなら、3台以上を検討するとよいと思います。

カメラの台数はあとから変更できますか?

対応できる場合もあります。ただ、機材やスタッフの手配が増えると、直前では難しいこともあるので、分かった段階で早めにご相談ください。

CONCLUSION

まとめ:カメラの数よりも、どう撮るか

まずは、正面引きと正面寄りの2台を基本に考える。記録的なものでよければ1台でも構いませんし、しっかり見せたければ2台、さらにいろいろな角度が欲しいなら3台以上、という選び方になると思います。

どういう映像にしたいか、どこを優先して撮ってほしいかなど、まずはご自身の希望するイメージを教えていただいて、そこから相談しながら決めていけばよいと思います。

Right And Leftでは、公演内容や会場、ご予算に合わせて構成をご案内しています。演奏会・発表会の撮影サービスや見積もりシミュレーションもご覧いただき、台数が決まっていない段階でもご相談ください。

WRITTEN BY斎藤 拓郎 | Right And Left

映像制作者・ギタリスト。演奏家としての経験を活かし、演奏会・発表会を中心に、音楽の流れや出演者の表現を大切にした映像制作を行っています。

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