演奏会・発表会の音声はどう録る?
三点吊り・ライン・エアー録音と、マイクが使えない会場での対応
映像はきれいなのに、演奏の音が遠い。せっかく公演を残すなら、音もきちんと聴けるものにしたいですよね。会場のマイクや手持ちのレコーダーをどう使い、編集でどう仕上げているかをお話しします。
基本はクリアな音を中心に、足りなければエアーを加える
三点吊りマイクで収録できるなら、まずその音を基本に考えます。使えない会場では、専用レコーダーを舞台寄りに置くなどして収録します。そのうえで、必要なら客席後方など、少し離れたところで録ったエアー音を足す。クリアに録るのはもちろん、実際に会場で聴いたときの気持ちよさも残したいと思っています。
録音するときに使い分けている3つの音
演奏会の撮影では、カメラの台数や画質だけでなく、音がどう聞こえるかも同じくらい大事ですよね。
私自身もギターを弾いてきたので、楽器の細かな強弱や、演奏している人の表現が分かる音を残したいと思っています。とはいえ、とにかくはっきり録れていれば、それだけでよいというわけでもありません。
会場で聴いていたときの響きや、演奏が終わったあとの拍手があると、そのときの雰囲気も感じられますよね。どうすればその両方を残せるのか、普段の録音方法と編集の話をしてみようと思います。
カメラを置く場所と、音を録るのによい場所は違います
例えば、客席後方からステージを撮影しているとします。カメラならズームで奏者に寄れますが、マイクはずっと客席の後ろです。楽器からかなり離れたところで音を録っているわけですね。
そうすると、楽器の音だけでなく、ホールの残響や近くのお客さんの話し声、荷物を動かす音なども入ってきます。演奏が少し遠く、ぼやけたように聞こえることもあります。
客席から撮った記念映像なら、そういうものとして特に気にならないかもしれません。ただ、演奏そのものをきちんと聴き返したいなら、舞台寄りにマイクを置くか、会場の録音設備を使うことが必要になってきます。カメラに付いたマイクだけで何とかしようとは考えない方がよいと思います。
まず三点吊りマイクが使えるか確認する
吹奏楽やオーケストラ、ピアノなどをホールで録るなら、私がまず確認したいのは三点吊りマイクが使えるかどうかです。舞台の上から吊り下げて使うマイクで、設備として備わっている会場もあります。
客席後方のカメラよりも楽器の音をクリアに録りやすく、演奏者や観客の邪魔にもなりません。Right And Leftでも、使える会場では基本的にこの音を中心に考えています。
三点吊りで録った音には、会場の響きもある程度含まれます。実際に聴いてみて、それだけで十分気持ちよければ、無理にほかの音を足す必要はないと思っています。

三点吊りがなければ、専用レコーダーで録る方法もあります
小さなホールや会場では、三点吊りがなかったり、あっても使えなかったりします。その場合、Right And LeftではTASCAMの「Portacapture X8」という小型レコーダーを使うことがあります。
基本は本体に付いているステレオマイクで録ります。ステージと客席が向かい合う会場なら、なるべく舞台寄りの中央付近を考えることが多いです。
ただ、音を録るのに都合がよいからといって、観客の目の前にレコーダーを置くわけにもいきません。視界や通行を妨げず、会場側から設置を認められる場所であることも大切です。
それに、舞台へ近づければ近づけるほど、よい音になるというわけでもありません。会場の広さや楽器の配置によっては、特定の楽器ばかり大きく入ってしまうこともあります。演奏全体のバランスと、実際に置ける場所の両方を考えて位置を決めています。
必要なら、特定の楽器を狙うマイクも追加します
Portacapture X8では本体のステレオマイクを使うことが多いですが、ある楽器の音をもう少しはっきり録りたいときなどは、ガンマイクを追加することもあります。
例えば本体ステレオの2チャンネルに、楽器の近くへ置いたガンマイクを1本加えて3チャンネル。状況によっては4チャンネルで録る場合もあります。別々に録っておけば、あとから聴き比べて、必要な音を必要な分だけ足せるわけです。
ただし、マイクを増やせば必ずよくなるわけではありません。音が届くタイミングにも違いが出てくるので、編集で細かく調整する必要があります。これについては、少し後で触れます。
毎回こういう構成にしているわけではなく、基本は本体ステレオのみ、必要なら追加するという使い方です。多く録っておくこと自体が目的ではないので、会場と編成に合わせて決めています。
クリアな音だけでは、会場の雰囲気が足りないこともある
ここで少しだけ、「ライン録音」という言葉についても触れておきます。これは会場の音響設備から音声信号を受け取って録る方法です。三点吊りの音をもらうこともあれば、MCのマイクやソロ用のマイク、ダンスの再生BGMをもらうこともあります。ラインだから必ずこういう音になる、というものではないんですね。
私は、まず楽器の音がクリアに聞こえる状態を作りたいと思っています。ただ、楽器のすぐそばで録った音だけだと、輪郭ははっきりしていても、ホールで聴いていたときの響きが物足りなく感じることがあります。
そんなときは、客席後方など少し離れた位置で録った「エアー音」を加えます。残響や拍手、歓声といった音が入っているので、少し足すだけでも会場で聴いていた感じに近づけられることがあります。
三点吊り、または会場に合わせて設置した専用マイクなど。
客席から感じる残響、拍手、歓声、会場の空気感。
すでに自然に聞こえるなら足さない。響きや臨場感が欲しいときに補います。
もちろん、エアー音は必ず混ぜるというものでもありません。三点吊りだけで十分自然に聞こえることもありますし、逆にエアー音だけで十分気持ちよく聞こえることもあります。決まった割合で混ぜるのではなく、実際に聴いた印象で決めるようにしています。
ダンス発表会は、BGMだけでは少し寂しいこともあります
ここまで生演奏の話をしてきましたが、ダンス発表会ではまた少し考え方が変わります。
会場で流しているBGMをラインでもらえれば、音楽自体はきれいに録れます。ただ、BGMだけだと客席の拍手や歓声が入らないことがあります。映像ではみんな盛り上がっているのに、音は曲だけ。これだと何だか少し寂しいんですよね。
なので、盛り上がる場面では別に録ったエアー音を加えて客席の反応を聞かせ、かえって邪魔になる場面では抑えます。MCやアナウンスがある場合は、会場のマイクの音も受け取れると、言葉を聞き取りやすくできます。
同じエアー音でも、いつ、どれくらい使うかによって印象は大きく変わります。このあたりは撮影が終わってから、映像を見ながら考えていくところです。
会場の録音設備は、事前に確認しておきたいです
三点吊りマイクがある会場でも、当日行けば自由に使えるとは限りません。主催者の方から使用希望を会場に伝え、申請や使用料について確認していただく必要があります。
その先の「どこから音声を分けてもらえるか」「MCやBGMも収録できるか」といった技術的な話は、撮影側と会場の音響担当者で直接確認した方がスムーズです。Right And Leftでも、担当者や会場の連絡先を教えていただければ、こちらから相談するようにしています。
録音のために使える設備と、そこに追加料金がかかるかどうかが事前に分かっていれば、機材や録り方を考えられます。逆に、当日になって「実はマイクが使えません」となると、こちらもかなり困ってしまいます。
Right And Leftでは、基本的な外部マイク録音と整音を基本プランに含めています。一方、会場の三点吊りマイクや音響設備の使用料は、原則として主催者様のご負担です。特別な収録体制が必要な場合は、事前にお見積もりをご相談します。
同時に録っていても、音がぴったり合うとは限りません
撮影が終わったら、それぞれのマイクで録った音を聴き比べます。そして、どの音を中心に使うか、どこで会場の響きを足すかを考えながら仕上げていきます。
ここで意外と知られていないかもしれませんが、一つのレコーダーで同時に録音していても、マイクの位置が違えば音の届くタイミングはずれます。
音には伝わる速さがあります。楽器のすぐそばにあるマイクには先に音が届きますが、少し離れた位置のマイクには、その分遅れて届きます。これをそのまま重ねると、音の輪郭がぼやけたり、何だか変な聞こえ方になってしまうことがあるんですね。
なので、複数の音を組み合わせるときは、必要に応じて編集でタイミングを微調整します。そのうえで、音量や音質を整えたり、客席の物音を抑えたりしていきます。ただ、録音時に演奏へ大きな物音が重なってしまった場合など、後からどうにもならないこともあります。
演奏系の撮影では、こういう細かな調整がけっこう大切になってきます。マイクをたくさん置くことよりも、録ってきた音をどう使えば、一番気持ちよく聴こえるかを考えたいところです。
まとめ:クリアさも、会場の響きも残したい
演奏をきちんと残したいなら、会場の三点吊りマイクが使えるかをまず確認する。使えなければ別のレコーダーを置くなど、会場に合わせて録り方を考えます。そして必要ならエアー音を加えて、その場で聴いたときの響きに近づける。
ただ、毎回同じ録音方法や編集が正解というわけではありません。実際に録れた音を聴いて、「これだけで十分気持ちいいな」と思えば、そのまま使うこともあります。
私としては、演奏者の表現がきちんと伝わり、当日の雰囲気も感じられる音を残したいと思っています。Right And Leftでは、演奏会・発表会の撮影を、こうした音声収録の方法も含めてご案内しています。
よくある質問
三点吊りマイクがない会場でも、良い音で録れますか?
三点吊りがなくても、専用レコーダーで録る方法があります。Right And Leftでは、X8の本体ステレオマイクを、舞台に近い客席中央付近などに置くことがあります。実際の位置と仕上がりは、会場の広さや響き、楽器の配置によって変わります。
Portacapture X8は外部マイクも接続できますか?
はい。普段は本体のステレオマイクを使い、必要なら楽器の近くに立てたガンマイクなどを接続します。3〜4チャンネルで収録することもあります。
三点吊りの音だけで十分ではないですか?
それだけで十分な場合もあります。すでに自然な響きが入っていれば、そのまま使います。もう少し会場の空気感が欲しいときに、客席側のエアー音を足します。
ダンス発表会のBGMをライン収録すれば、歓声も入りますか?
会場から受け取る信号によります。BGMだけのラインには、拍手や歓声がほとんど入らない場合があるので、別に録ったエアー音を使って補います。
カメラ内蔵マイクだけでは駄目ですか?
全体の様子が分かればよい簡易記録なら、目的に合う場合もあります。演奏をじっくり聴き返すなら、舞台に近いマイクや会場設備を使った録音をおすすめします。
三点吊りマイクの利用申請は誰がしますか?
原則として主催者様から会場に利用希望を伝えていただきます。音響担当者または会場の連絡先が分かれば、接続や分岐の方法は撮影側で直接確認します。会場の設備使用料は、主催者様のご負担が基本です。
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